野見のしおばかり

野見のしおばかり−シオバカリと呼ばれる大きな竹

野見のしおばかりは、高知県須崎市の野見地区に伝承されている小正月の行事で、海神である竜神にその年の大漁と集落の繁栄を祈り、旧暦の1月14日の夜に行われます。

漁業に従事する人達がシオバカリで地区内を地搗きして回り、最後にシオバカリを海に立てて、その年の大漁と集落の繁栄を祈願すると共にシオバカリが海側か陸側のどちらに傾いたかで一年の豊漁、豊作等の豊凶を占う行事です。シオバカリを海中に立てる時刻が深夜の干潮時であることから、「よしお」や「よしおさん」とも呼ばれています。

「野見のしおばかり」は、高知県の無形民俗文化財や、文化庁の記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財に指定されています。

大竹の呼称もシオバカリ

広場に置かれたシオバカリ この行事そのものを「しおばかり」とも呼んでいますが、写真にある五色の短冊などで飾られた十数メートル程の大きな根付き竹のことも「シオバカリ」と言います。ここでは、行事をさす時は平仮名の「しおばかり」を、大きな竹をさす時にはカタカナの「シオバカリ」を用います。

シオバカリは、長さ十数メートルほどの孟宗竹を根を残したまま切り出し、上部の笹を残してそこに五色の短冊を付けたもので、竹の中央部には藁を縄で巻き付けて、割竹に色紙を付けたヤナギと呼ばれる飾りが垂れるように差し込まれています。ヤナギは12本で、1年の12か月を意味しているそうです。

サンヤリ このシオバカリの竹は、高知県中土佐町久礼の孟宗竹が昔から使われており、昔は船で獲りに行っていたそうです。シオバカリの飾りつけは、地域の子ども達によって、前もって少しずつ行われるそうです。シオバカリだけではなくサンヤリと呼ばれる地搗きをする際に使う用具の準備もしおばかりが行われる日の夕方までに作られます。

サンヤリは、竹と縄を使って輪を作り、その輪から三本の竹を足として取り付けたもので、地搗きをする時に輪の中にシオバカリを通して倒れないように三方向から支える道具です。シオバカリは完成すると、地区の広場に立てておきます。

迫力ある悪霊払いの「地搗き」

地搗きはジバライとも呼ばれていて、悪霊を退散させるために行います。

夜になると、行事に参加する人達たちが当屋の家に集まってきます。そして、野見地区の氏神である須賀神社の宮司からお祓いを受け、その後、おきゃく(祝宴)を始めます。そして、その後、干潮時に海岸に着くように時刻を見計らい、シオバカリを立ててある広場に集まり、もう一度お祓いを受けます。その後、シオバカリを倒してヤナギをはずし、悪霊を退散させるための地搗きの準備をします。

背中に「海神祭」と染め抜ぬいた藍色のはっぴを着た人達が、大きなシオバカリを担いで、潮ばかり公園を目指して進みます(昔は蛭子崎を目指して進んでいた様です)。担ぐと書きましたが、先頭の人は、シオバカリの根に座る様にして移動しています。サンヤリで支えながら多くの人達が担いで行っているのですが、シオバカリが大きいだけに、引きずって行っている様にも見えます。

広場での御祓いの様子 シオバカリを担いでいく様子 シオバカリを担いでいく様子

五箇所の辻でシオバカリを真っ直ぐに立て、古老の「木遣り唄」に合わせ、威勢の良い掛け声と共に数回にわたって地面を突く「地搗き」をします。そして、最後の一突きが終わると激しくシオバカリを揺さぶります。この時、シオバカリに付けられている短冊が舞い落ちます。この舞い落ちる短冊は、魔よけになると言われており、地域の子ども達が競って拾いあいます。

地搗きをする時には、シオバカリを支える役目として、サンヤリの足を操作する竹のサンヤリとシオバカリの上部に結びつけた縄を操る縄のサンヤリがあります。また、シオバカリを上下に動かす役目として、大人の目の高さのところを持つ「上搗き」や根元の部分を持つ「根搗き」などの役割があるそうです。

シオバカリを立てる シオバカリを激しく揺する 短冊を拾うために待つ子ども達

海の中にシオバカリをたてる

潮ばかり公園に到着すると、シオバカリを海の中にたてる準備をします。男たちが寒い海の中に飛び込み、海の中に立てた杭の上に乗り、シオバカリの根を受け取る準備をします。一方、陸では、外してあったヤナギをシオバカリに差込み、元の形に戻します。そして、陸から海の中の男たちにシオバカリの根がわたされ、ゆっくりとシオバカリを海中に立てていきます。海の中の杭に、まっすぐに、しっかりと、シオバカリを結わえ付ければ終了です。

シオバカリが陸側に倒れれば、その年は「豊作」、海側に倒れれば、その年は「豊漁」と言われています。2009年は「豊作」とでたようです。

シオバカリを立てる杭と海中の男たち 夜のシオバカリ 翌日のシオバカリ

動画

2009年2月8日撮影−しおばかり(約8分30秒、47MB)(Windows Media Player)

メモ

各所で「潮ばかり」と記載してあるのを見かけますが、県の民俗無形文化財リスト上では平仮名表記がされていますので「しおばかり」と記載しています。

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